管理栄養士のローカーボ・キッチン

糖質制限食を整理する

Medical Tribuneという
医師や医療関係者のための
会員制専門情報ウエブサイトがあります。

そのサイトに
『糖質制限は短期効果あるも長期不良か』
という記事(2016.06.24 07:20)が掲載されました。

京都府立医科大学大学院内分泌代謝内科学教授の
福井道明氏による、
第59回日本糖尿病学会年次学術集会のシンポジウムで、
『食事療法の新たなエビデンスを求めて』において、
低炭水化物食のエビデンスとその功罪を中心に述べられたものです。

記事を要約すると

1 減量効果について
低炭水化物食は、
短期的には減量効果などが認められる。

2人工甘味料について
マウス実験では腸内細菌叢の変化により
耐糖能が悪化。
今後このようなエビデンスが続けば
摂取の推奨を検討する必要がある。

3腎機能について
軽度腎機能障害例では、
蛋白質摂取の増加により
推算糸球体濾過量(eGFR)の有意な低下が見られたことから、
「糖尿病腎症3期例には低炭水化物食を勧めてはならない」

3低炭水化物食の長期の安全性について
研究(Ann Intern Med 2010)の結果、
低炭水化物食を導入すると死亡率が増えた。
しかし、
植物性蛋白質を多く摂取した場合は逆に死亡率が低下した。

として、
「低炭水化物食を指導する場合は蛋白質や脂肪の質を考慮して行うべき」
「低炭水化物食の適応は腎機能正常の肥満者が好ましく、食物繊維・ビタミン・ミネラルが不足しないよう野菜を十分摂取し、脂質や蛋白質の質も考慮した食事指導が望ましい」

と述べられています。


糖質制限食では、
これまで、
糖質の1食の摂取グラムと、
そのネーミング、

ケトン体(生理的)のエネルギー効率とその生成方法
などについて、
専門の先生の間で議論されることが多かったと思いますが、
糖質や脂質だけでなく、

A
タンパク質、ビタミン、ミネラル、食物繊維など
総合的な科学的な栄養学の視点

B
糖質制限をする方の目的、病態

C
そして
例えば、
食品の安全性、
買い物や調理の手間はかけられるのか、
付き合いや接待や家族との団欒など、
文化的、情緒的な要素

これらを組み合わせて
ここにあわせて実践していくことになりますし、
クリニックでは患者さんにご提案しています。

Bの糖質制限をする方の目的、病態
によっては、
糖質の摂取グラムに関しては、
あまりゆるくては、
例えば、
投薬やインスリン量を減らしたいと考える方にとっては、
効果が得られなかったり、
例えば、
やせがあるものの、
血糖の乱高下による気分の落ち込み、
あるいはアレルギー疾患を治したいなどの目的で
糖質制限はしたいものの、
消化吸収能力が落ちている方は、
(胃酸と消化酵素の分泌能力を示す
 ペプシノーゲン検査があります)
タンパク質や脂質の質と食べ方をお伝えしないと、
お腹のハリ、ガスがたまる、胸焼け、下痢、嘔吐など、
消化管に不調をきたし、
その方のQOLを低下させてしまうこととなります。

また、例えば、
肉や乳製品に偏り、
野菜さえ、
糖質があるからという理由で
避けてしまうような
極端なやり方をしたい場合やその期間は、
腸内環境のための食物繊維、
魚に含まれるオメガ3系の必須脂肪酸、ビタミンD、
そして、乳製品から得られるカルシウムの拮抗ミネラル
マグネシウムはサプリメントから確保するのかなどを
ご相談することも必要かと考えます。
とくに、マグネシウムは、
ストレスでも消耗されるミネラルで、
不足すると、
イライラしやすい、集中力の低下のほか、
上まぶたがピクピクする
不整脈や心臓発作をおこしやすい、
動脈硬化や、虚血性心疾患のリスクが高まるなど、
心疾患の予防に欠かせません。
糖尿病の方(高血糖状態が続いている方)は、
尿中排泄の促進によって、
不足しやすい状態にあります。
マグネシウムは、
大豆製品全般
海藻(乾物)に比較的、多く含まれます。
糖尿病の方で、糖質制限すればリアルタイムに
そこから先の高血糖は避けられますが、
それまでの高血糖の記憶は消さないので、
マグネシウムをはじめ、
抗酸化栄養対策も必要であることがわかります。

このように、
糖質制限食は、
どんな病態か、
肥満があるかないかで、
糖質量を考え、
次に、
入れる栄養のバランスを整え、
さらに、
病態によって不足しがちな、
あるいは強化しておきたい栄養素をプラスし、
その方の消化能力を考慮しながら
具体的な食材や
ときにはサプリメントという形で栄養素をくみたてるという、
栄養の科学を縦糸とするならば、
そこに、
その方の、
これまでの食体験、その方の嗜好、ライフスタイルなど
文化的、情緒的な想いを横糸にして織り交ぜながら、
その方だけの、
1枚の布として、
実践方法をお渡しするのが、
糖質制限食の栄養指導であると考えますし、
そのような栄養指導があってこそ、
糖質制限の科学が、
本当に安心、安全であるとして
広まっていくのではないかと考え、
日々、努力したいと思っております。

このような病態別の糖質制限食の実践を、
いかに、患者さんにお伝えするかについて、
糖質制限の仕方、
糖質の使い方、
消化吸収能力にあわせたタンパク質の選び方、
病態によってプラスαしておきたい栄養素についてなど、
今週末、7月3日、講師をつとめます。
こちらは
認定ONP(栄養カウンセラー)対象の
「研修講師養成講座」となります。
ONP講座はこちらです。
http://www.orthomolecular.jp/onp/

ドクターは、患者さんの食事指導に、
15分〜30分もなかなか時間がとれないと思います。

しかし、このように、
糖質制限食の栄養指導は、
こまかく、丁寧に、ひとりひとりに合わせて
ご提案することが不可欠です。
その方の食事記録を深読みし、
その方の生化学データと照らし合わせ、
その方にあった栄養素を提案していくために
管理栄養士をはじめ、
コメディカルの役割は大きいと思います。
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